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感覚

愛媛県の武漢肺炎の状況もようやく落ち着いていきましたので、久々に友人とディナーを楽しんできました。

 

「主観と客観」

 

床を押すには力が必要で、その力は筋肉に由来する。これは力学(りきがく)という学問の原理としては正しいです。

しかし、力の源が筋肉にあるということから、力感を込めて地面を強く押さなければいけないと思い込んでいる人が非常に多いです。

指導者でも「ぎゅっ」と大きな力で地面を蹴りなさいと教えてしまう人が多いと思います。

 

ある一定の力を出すときに、力感の大きい動作と小さい動作があるとしたら、小さい動作を選ぶべきことを教える人は少ないのではないかと思います。

 

学問の原理(客観)を、どのように身体運動の実践(主観)に落とし込むのか。そのときには、感覚の世界への翻訳が必要です。客観の世界と主観の世界は全くの別世界です。

科学的な指導といえども、身体運動の客観原理(スポーツ科学)を教えることにとどまらず、それを感覚に翻訳するところまでカバーすることが必要だと私は思います。科学は机上の世界から、自分の体の世界に活かしてこそ意味があります。誰にとっても共通の科学を自分だけに翻訳することで、自分と科学の繋がりを感じることができるのです。自分だけの動作感覚を編み出し、自分を磨き上げることに向かっていく。科学は普遍ですが、動作感覚は個性です。基本は一つで、個性は多様です。

主観と客観のズレを通じて、人間が力を発揮し、力を扱うということの全貌が見えてくるのではないでしょうか。